福生病院の透析中止の事例と倫理的問題について

こんばんは。最近のトピックとして、福生病院の透析中止の事例から、透析とはどういう治療なのか、解説していきたいと思います。

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まず、大前提として透析治療とはどういうものかご存知でしょうか?

人間が生きていく上で、五臓六腑と呼ばれる、心臓、肝臓、腎臓、肺、脾臓(五臓)と、胆嚢、小腸、大腸、胃、膀胱、三焦(リンパ管) (以上六腑)は必要不可欠な臓器です。

この中で、腎臓と呼ばれる臓器は普通は左右2つあり、主に血液をろ過して、老廃物を体の外に出すために尿を作る臓器です。まあ簡単に言うと不要物除去フィルターのようなものです。片方はなくてもよい、とされていますが、2つあるに越したことはありません。

この腎臓が悪くなる原因は主に3つあって、1つは高血圧によって腎臓が長い期間かけて痛むこと、1つは糖尿病があって腎臓が長い期間かけて痛むこと、もう1つは腎炎と呼ばれる特殊な病気です。

多くの方は、高血圧や糖尿病を患い、このコントロールが悪いと腎臓を悪くしてしまい、やがて透析が必要になります。腎臓が悪くなると、このフィルター能力が落ちてしまい、尿が作られなくなってしまいます。すると主に2つ、問題が生じます。

1つは、体にとって毒になる物質が体外へ捨てられなくなること。人が生きていく上で必要なエネルギーやタンパク質を体の中で作ると、ゴミが出ます。これをフィルターで集めて尿にして捨てるのが、腎臓の大切な機能の1つです。

もう1つは、水分の逃げ場が失われることです。人は水を飲みますし、食べ物もほとんどは水でできています。つまり、体の中に入れた分の水は、出口がないと体の中に溜まっていきます。ある程度なら大丈夫ですが、たまりすぎると次第に足がむくんだり、肺に水が溜まったりして苦しくなります。もちろん、汗などでも多少は蒸発しますが、それでは追いつかないほど私たちは普段食べたり、飲んでいるはずです。

腎臓がいかに大切か、お分り頂けたでしょうか?

腎臓が悪くなってしまったものは仕方がないです。透析治療とは、血液を一度点滴のところから吸い出して、機械のフィルターに通して、体にとって不要な毒物や、水分を抜いた上で必要な成分だけをまた点滴のところから体へと返してあげる、そういう治療です。

尿は普通は毎日出ますから、透析も週に1回というわけにはいきません。最低でも週に3回は必要になります。

透析治療自体は非常に画期的なものですし、素晴らしい治療だと私も思います。

一方で、透析をすることの苦痛も無視できない事実としてあります。透析患者さんは、週3回、1日につき4,5時間もの間、病院で透析治療を受けることになります。血液をろ過するためには、二本の太い点滴の針を、透析の度に刺さなければいけません。

また透析さえすれば問題がないかというとそうではなく、透析の時に血圧が下がって気分が悪くなる方、頭痛に悩まされる方もいます。私たちは時に風邪を引くだけでもしんどくなります。個人差があるので、透析をしていても平気という人もいるかもしれませんが、透析の度につらい症状があり、これが2日に1日、4時間も続くとなると透析をやめたい、という考えを持つ方が中にはいるかもしれません。

 

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今回の福生病院での件では、ニュースなどでの客観的状況としてしか分かりません。亡くなられた方がどれほどの症状だったかとか、そう言ったことが分からない以上は否定も肯定もできませんが、個人の選択の自由はあって然るべきだとは思います。

そしてもう一つ、透析をやめた後に何が起こるかということですが、これは2パターン考えられます。もちろん生きていくのに必要な治療をやめるということなので、最終的な結末は言わずもがなですが、体の中に毒物がたまって、不整脈などが起こり亡くなる場合と、体に水分がたまって、心不全を起こして呼吸困難になり亡くなる場合の2通り考えられます。

前者のよつに毒物がたまると、苦しむイメージが強いですが、実は毒物がたまると意識が朦朧としてくるので、苦しみは少ない、とは言われています。一般的には、ですが。

一方、後者の場合は体に余分な水分がたまり、行き場をなくした水分は肺にたまり、肺水腫という状態になって呼吸が苦しくなって最後は酸素不足で命を落とします。あたかも水に溺れるような状態になるので、苦しい。

今回の事例では、亡くなられた患者さんは最後に透析中止の撤回を求めていたとのことでしたので、もしかしたら後者の症状が強く出てしまったのかもしれませんが、ご主人の突然の病気といった不幸な偶然が重なり、残念な結果となってしまいました。

今回の事例をまとめると、以上のようになります。ニュースなどを調べていて気づいたのですが、3年くらい前の話ですが、アナウンサーの長谷川豊氏は自身のブログでかなり透析患者さんに対する過激な発言をしていたようですね。医療のプロの立場から敢えて私見を言わせてもらうならば、彼の主張は根本的に的を外しており無責任な意見と言わざるを得ないでしょう。

まず大前提として、透析患者さん=糖尿病や高血圧で自業自得、ということが医学的に明らかな間違いです。

たしかにそうしたケースが多いことは事実ですが、冒頭で述べた、「腎炎などの特発的な病気」で腎臓を悪くして若くして透析導入になる患者さんも無視できない数いらっしゃいます。そうした医学的知識に対して無知なためなのか、あるいはマイノリティを無視した発言なのかは不明ですが。

もちろん、高血圧や糖尿病で腎臓を悪くした方でも、人によって事情は異なるし、そもそもそうした病気自体が体質的になりやすい人となりにくい人がいますしね。

彼は糖尿病に2つの病型があることをご存知なのでしょうか?

彼は、ご自身やご自身の身内の方が、腎炎などの特発的な病気で透析導入しか生きる方法がなくなったとしても、それでも同じことを言うのでしょうか?

さて、それはさておき、透析の問題に関してはたしかに医療費の問題と合わせて無視できない国家レベルの問題であることは事実です。そのためにも、私のような、いち内科医にできることとして、こうして予防医学の普及を行なっていくことに僅かでも意味があると信じて私も、読者の皆さんにも、明日からの活力にしていけたらいいなと思って更新しています。それではまた明日。

<参考文献、サイト>

1)日本透析学会ガイドライン  維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言

2) https://www.google.co.jp/amp/s/biz-journal.jp/i/amp/2019/01/post_26413.html(Buisiness Journal)

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