日別アーカイブ: 2019年3月19日

高齢者の肺炎は予防できるか

こんにちは。今日は、日本人の死因で3番目に多い、肺炎について。先日の内田裕也さんの例など、芸能人の方もかかることが多い病気。肺炎とは、どのような病気なのでしょうか。

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一般的に「かぜ」と言われている病気は、鼻から喉の部分までの上気道と呼ばれるところの感染で、原因はウイルスの感染です。基本的にはウイルスの感染には抗生物質(抗菌薬)が効きませんインフルエンザなどはそれ専用の抗ウイルス薬というのがありますが、風邪のウイルスにはそうした薬はないので、基本的には自身の免疫力により治すしかない病気です。

では、風邪と肺炎は何が違うのかというと、肺炎は肺そのものに感染が起こる病気です。ウイルス性の肺炎もありますが、多くは細菌と呼ばれる微生物が原因です。原因が細菌の場合は治療には抗生物質(抗菌薬)が必要です。

肺炎が起こる原因は様々ですが、基本的には原因となる菌が、気管支を通って肺の中に入り悪さをすることで起こります。口の中や鼻の中は、常在菌と呼ばれる雑菌だらけです。

以前、長引く咳の時に少し触れましたが、人は咳をすることで気管、肺の中に菌が入らないように予防しているのですが、これがうまくいかないと肺炎を起こします。ご高齢の方や、脳梗塞を起こした方だと、この咳がうまく出てこないため、肺炎を起こしやすいのです。これを誤嚥性肺炎といいます。

先ほど肺炎の原因は細菌が多いと言いましたが、具体的には「肺炎球菌」、「インフルエンザ桿菌」という菌が原因となります。肺炎球菌による肺炎は全体の25~40%とも言われています。もちろんこの他にも口の中の菌は何種類もいますので、色んな菌が原因で起こります。(注)インフルエンザ桿菌はインフルエンザウイルスとは別物です。

そこで、今回の本題ですが、最も多い「肺炎球菌」の対策として、肺炎球菌ワクチンの接種が平成26年よりできるようになりました。対象者は、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の方、もしくは60~65歳でかつ心臓、腎臓、肺の機能に障害があり日常生活が制限される(ややこしいですが、つまり病院などに行きたいときに気軽に行けないということでしょう)方、HIVウイルスに感染していて日常生活に障害がある方となっています。

ややこしいですよね。簡単に言うと、60歳や65歳の方は接種できるけど、63歳の人は接種できないということです。謎の5年しばり・・・63歳の方はあと2年待ってくださいということです。

かなり分かりにくいのでもう「65歳以上で未接種の方が対象」でいいような気はしますが、そのあたりは厚生労働省さんに聞いてもらうしか・・・笑

あと、1回接種している方は対象外です。また過去5年以内に接種を受けている方は、注射により皮膚の痛みなどの副作用が強く出る場合があるので注意してください。

 

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最後に、本題のテーマである肺炎の予防についてですが、残念ながらすべての肺炎を完全に予防することはできません。また肺炎球菌ワクチン自体は、約90種類ある肺炎球菌の中でも頻度の高い23種類の菌に対する予防ワクチンです。なので、ワクチンを接種したからといって肺炎球菌の肺炎にかからないとは限りません。また、冒頭でも少しふれたように、脳梗塞後で寝たきりの患者さんの場合はやはり食事だけでなく自身の唾液を誤嚥したりしてしまうので、やはり依然として肺炎が原因で亡くなるケースは多いのが現状です。

しかし、肺炎球菌による肺炎が多いこともまた事実です。ワクチンを打つことで、肺炎球菌肺炎を27.4%減少させた(この数字をどう捉えるかは個人の価値観にもよると思いますが・・・)などの国内の報告もありますので予防効果のエビデンスはきちんとあります。

※脳梗塞については様々な原因がありますが、以前のブログでも脳梗塞について少し触れていますのでご参考までに。

<参考文献、サイト>

1)厚生労働省ホームページ 肺炎球菌感染症(高齢者)  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html

2)Motoi Suzuki et al;  Serotype-specific effectiveness of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumococcal pneumonia in adults aged 65 years or older: a multicentre, prospective, test-negative design study. Lancet Infect Dis. March 2017.

 

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福生病院の透析中止の事例と倫理的問題について

こんばんは。最近のトピックとして、福生病院の透析中止の事例から、透析とはどういう治療なのか、解説していきたいと思います。

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まず、大前提として透析治療とはどういうものかご存知でしょうか?

人間が生きていく上で、五臓六腑と呼ばれる、心臓、肝臓、腎臓、肺、脾臓(五臓)と、胆嚢、小腸、大腸、胃、膀胱、三焦(リンパ管) (以上六腑)は必要不可欠な臓器です。

この中で、腎臓と呼ばれる臓器は普通は左右2つあり、主に血液をろ過して、老廃物を体の外に出すために尿を作る臓器です。まあ簡単に言うと不要物除去フィルターのようなものです。片方はなくてもよい、とされていますが、2つあるに越したことはありません。

この腎臓が悪くなる原因は主に3つあって、1つは高血圧によって腎臓が長い期間かけて痛むこと、1つは糖尿病があって腎臓が長い期間かけて痛むこと、もう1つは腎炎と呼ばれる特殊な病気です。

多くの方は、高血圧や糖尿病を患い、このコントロールが悪いと腎臓を悪くしてしまい、やがて透析が必要になります。腎臓が悪くなると、このフィルター能力が落ちてしまい、尿が作られなくなってしまいます。すると主に2つ、問題が生じます。

1つは、体にとって毒になる物質が体外へ捨てられなくなること。人が生きていく上で必要なエネルギーやタンパク質を体の中で作ると、ゴミが出ます。これをフィルターで集めて尿にして捨てるのが、腎臓の大切な機能の1つです。

もう1つは、水分の逃げ場が失われることです。人は水を飲みますし、食べ物もほとんどは水でできています。つまり、体の中に入れた分の水は、出口がないと体の中に溜まっていきます。ある程度なら大丈夫ですが、たまりすぎると次第に足がむくんだり、肺に水が溜まったりして苦しくなります。もちろん、汗などでも多少は蒸発しますが、それでは追いつかないほど私たちは普段食べたり、飲んでいるはずです。

腎臓がいかに大切か、お分り頂けたでしょうか?

腎臓が悪くなってしまったものは仕方がないです。透析治療とは、血液を一度点滴のところから吸い出して、機械のフィルターに通して、体にとって不要な毒物や、水分を抜いた上で必要な成分だけをまた点滴のところから体へと返してあげる、そういう治療です。

尿は普通は毎日出ますから、透析も週に1回というわけにはいきません。最低でも週に3回は必要になります。

透析治療自体は非常に画期的なものですし、素晴らしい治療だと私も思います。

一方で、透析をすることの苦痛も無視できない事実としてあります。透析患者さんは、週3回、1日につき4,5時間もの間、病院で透析治療を受けることになります。血液をろ過するためには、二本の太い点滴の針を、透析の度に刺さなければいけません。

また透析さえすれば問題がないかというとそうではなく、透析の時に血圧が下がって気分が悪くなる方、頭痛に悩まされる方もいます。私たちは時に風邪を引くだけでもしんどくなります。個人差があるので、透析をしていても平気という人もいるかもしれませんが、透析の度につらい症状があり、これが2日に1日、4時間も続くとなると透析をやめたい、という考えを持つ方が中にはいるかもしれません。

 

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今回の福生病院での件では、ニュースなどでの客観的状況としてしか分かりません。亡くなられた方がどれほどの症状だったかとか、そう言ったことが分からない以上は否定も肯定もできませんが、個人の選択の自由はあって然るべきだとは思います。

そしてもう一つ、透析をやめた後に何が起こるかということですが、これは2パターン考えられます。もちろん生きていくのに必要な治療をやめるということなので、最終的な結末は言わずもがなですが、体の中に毒物がたまって、不整脈などが起こり亡くなる場合と、体に水分がたまって、心不全を起こして呼吸困難になり亡くなる場合の2通り考えられます。

前者のよつに毒物がたまると、苦しむイメージが強いですが、実は毒物がたまると意識が朦朧としてくるので、苦しみは少ない、とは言われています。一般的には、ですが。

一方、後者の場合は体に余分な水分がたまり、行き場をなくした水分は肺にたまり、肺水腫という状態になって呼吸が苦しくなって最後は酸素不足で命を落とします。あたかも水に溺れるような状態になるので、苦しい。

今回の事例では、亡くなられた患者さんは最後に透析中止の撤回を求めていたとのことでしたので、もしかしたら後者の症状が強く出てしまったのかもしれませんが、ご主人の突然の病気といった不幸な偶然が重なり、残念な結果となってしまいました。

今回の事例をまとめると、以上のようになります。ニュースなどを調べていて気づいたのですが、3年くらい前の話ですが、アナウンサーの長谷川豊氏は自身のブログでかなり透析患者さんに対する過激な発言をしていたようですね。医療のプロの立場から敢えて私見を言わせてもらうならば、彼の主張は根本的に的を外しており無責任な意見と言わざるを得ないでしょう。

まず大前提として、透析患者さん=糖尿病や高血圧で自業自得、ということが医学的に明らかな間違いです。

たしかにそうしたケースが多いことは事実ですが、冒頭で述べた、「腎炎などの特発的な病気」で腎臓を悪くして若くして透析導入になる患者さんも無視できない数いらっしゃいます。そうした医学的知識に対して無知なためなのか、あるいはマイノリティを無視した発言なのかは不明ですが。

もちろん、高血圧や糖尿病で腎臓を悪くした方でも、人によって事情は異なるし、そもそもそうした病気自体が体質的になりやすい人となりにくい人がいますしね。

彼は糖尿病に2つの病型があることをご存知なのでしょうか?

彼は、ご自身やご自身の身内の方が、腎炎などの特発的な病気で透析導入しか生きる方法がなくなったとしても、それでも同じことを言うのでしょうか?

さて、それはさておき、透析の問題に関してはたしかに医療費の問題と合わせて無視できない国家レベルの問題であることは事実です。そのためにも、私のような、いち内科医にできることとして、こうして予防医学の普及を行なっていくことに僅かでも意味があると信じて私も、読者の皆さんにも、明日からの活力にしていけたらいいなと思って更新しています。それではまた明日。

<参考文献、サイト>

1)日本透析学会ガイドライン  維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言

2) https://www.google.co.jp/amp/s/biz-journal.jp/i/amp/2019/01/post_26413.html(Buisiness Journal)

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